
【さらに読む】街市の豆腐店
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壹品豆品(ヤッバン、英語名 Top Soya)のブランドストーリー:
毎日つくりたての新鮮な豆腐を食べられるのは、ひとつの幸せです。この日、壹品豆品の創業者・羅孟慶(Jeff)さんにお話を伺うと、まるでタイムマシンに乗ったかのように、数十年前の香港から話が始まりました。
1960〜70年代の香港には100軒を超える豆腐工場がありましたが、1997年には24軒に減り、現在では10軒足らずしか残っていません。香港に現存する豆品(大豆食品)工場は約9軒。新佛香食品有限公司(サンファッヒョン)は、衰退が続く豆品業界にあって、斜陽産業とみなされてきたこの産業を発展させ続けることに成功した一社です。同社は2007年に「壹品豆漿(壹品豆乳)」ブランドを立ち上げた香港最大の豆品工場で、その製品は街市(ガーイシー、香港の公設市場)、スーパーマーケット、さまざまな飲食店やチェーンレストランに供給されています。
「街市の店で豆腐を買う」
Jeffさんのお母様は街市の店でほぼ50年働き、香港の街市の各時代の移り変わりと豆品市場の変遷を見てきました。時代ごとの豆腐の包装方法の話は、実に興味深いものでした。数十年前にはまだ買い物用のポリ袋がなく、街市で豆腐を買うと、店主は新聞紙で包んだ豆腐を鹹水草(ハームソイチョウ、乾燥させた水草の紐)で縛ってくれました。この昔ながらの包装の知恵には、持ち帰る途中で豆腐が崩れにくくなるという効果もあったのです。
その後、叉燒(チャーシュー)を包むのに使う光沢紙で豆腐を包むようになり、1980〜90年代頃になってようやく赤や白のポリ袋に豆腐を入れるようになりました。紙で包んでからポリ袋に入れることもありました。今日では、多くの豆腐店に雪櫃(シュッグァイ、冷蔵庫のこと)が設置されているため、街市でもあらかじめパックされた豆腐を買うことができ、こうしたパック入り豆腐も多くのお客に親しまれています。

かつて豆腐店の店主は、新聞紙で包んだ豆腐を鹹水草で縛っていました。 参考画像出典: https://hk.on.cc/hk/bkn/cnt/news/20161215/bkn-20161215060057931-1215_00822_001.html https://www.mpweekly.com/culture/環保-鹹水草-走塑-130656
「昔の豆品づくりの物語」
子どもの頃、お父様が未明から豆腐づくりを始めるのを見ていたと、Jeffさんは語ります。家族がまだ寝ている夜中の4時には、もう仕事が始まっていました。最初の頃は自転車で豆腐を配達していて、自転車の前に板豆腐を5、6枚、後ろに5、6枚積んでいたそうです。
その後はレイランド社製の「紅頭貨車」(ホンタウフォーチェー、車体前部が赤い貨物トラック)で配達するようになりました。当時は香港の地下鉄(現在のMTR)がまだ開通しておらず、この種のトラックで荷物を運ぶのはごく一般的でした。Jeffさんは、トラックに同乗していたおじさんのことを覚えています。荷台に立ち、車が走っている間は片手で豆腐を押さえ、もう片方の手で車体後部のロープをしっかり握って体のバランスを保っていたそうです。
昔の街市はとても簡素で、まわりは石段だらけの道で、平らな道ではありませんでした。街市は狭く、手押し車さえ入れませんでした。配達人はひとりで豆腐を運び、時には頭に布を載せて、その上に板豆腐を5、6枚頂いて街市の店まで届けました。豆乳の配達には、擔挑(タームティウ、天秤棒)に新鮮な豆乳を担いで運びました。
豆腐を売る店主の仕事は、日差しにも雨にもさらされるもので、豆腐は「山積みのまま」道端で直接売られていました。当時「豆腐トラック」に上がるには、車体後部の木のはしごをゆっくり踏んで荷台へ登らなければなりません。豆腐の配達人はみなスタントマンのように身のこなしが軽く、子どもの頃に見たこうした光景はどれも実に忘れがたいものだったといいます。のちに香港には屋内型の街市が現れましたが、当然まだ冷房はなく、一区画ずつに仕切られた店はとても小さなものでした。こうした豆腐店は、多くの近隣住民が毎日通う場所になったのです。

当時、レイランド社の「紅頭貨車」で配達するのはごく一般的でした。
参考画像出典:
https://www.hkitalk.net/HKiTalk2/thread-1055077-1-1.html
https://ne-np.facebook.com/theoldhongkong/photos/a.648910551801562/6521173684575190/
「新鮮な豆腐を1日2回街市へ届けられるのは、世界でも香港だけ」
香港の街市で売られる豆腐は、毎日つくりたてなので実はとても新鮮です。壹品は毎日2回、街市へ配達します。未明の4〜5時に1回、正午12時にもう1回です。交通の便が良く輸送距離が短いため、新鮮な豆腐を1日2回配達できるのは、世界でもおそらく香港だけでしょう。シンガポールも台湾も配達は1日1回だけですが、香港は今も1日2回の新鮮な豆腐の配達を続けており、夜中の12時に1回分を製造し、朝の8〜9時にもう1回分を製造します。ですから、香港の街市で買う豆腐はどれも最も新鮮なのです。1日に2回製造するので、午前でも昼過ぎでも、街市に行けば最も新鮮な豆腐を買うことができます。まさに名実ともに、香港ならではの特色です。
街市で豆腐を買うお客が一番心配するのは、置きすぎて酸っぱくなってしまうことです。ですから今度「まだ温かい豆腐(仲暖嘅豆腐)」に出会ったら、それは間違いなく一番新鮮な品です。店主は四角いステンレスのへらで手際よく豆腐を切り分け、どの豆腐も実に端正な形をしています。店主に「端のところをください(要邊)」と頼めば、少し大きめの豆腐がもらえるかもしれません。
香港の人々は大豆食品が大好きで、パック入り豆腐や無糖豆乳の売り上げは伸び続けています。近年改装された街市はそれぞれテーマ性のある特色を持ち、街市の豆品市場も安定して発展しています。お客の健康志向が高まったことで、無糖豆乳の売り上げも右肩上がりです。街市で最も人気のある大豆食品は、実は水豆腐(みずどうふ、水分の多い軟らかな豆腐)。豆乳の人気は、1位がプレーン豆乳、2位が無糖豆乳です。
香港の人々は豆乳を飲むのも大好きで、香港では各地で生産された豆乳を買うことができます。日本と香港では豆乳づくりの工法が異なり、日本はおからごと煮てから漉す「熟渣」方式、香港は生のまま漉す「生渣」方式です。日本は気候が寒いため、多めの大豆で濃度の高い、小さめのカップの温かい豆乳をつくります。体が温まり、口当たりもなめらかです。日本では豆乳を煮上げてからおからを漉す(熟渣)ため、豆乳はよりなめらかになります。香港の豆乳づくりも天候に合わせて調整され、夏はのどごしよくさらりと、冬は濃いめに仕上げます。台湾の豆乳は比較的甘く、現地の人々は砂糖を入れて飲むのを好みます。砂糖を加えると大豆の青臭さを抑えられるからです。
「ブランドはなぜ『壹品』というのか?」
ブランドづくりの取り組みのひとつが、ブランドロゴの設計です。 壹品のロゴには「壹品豆品」の4文字が隠されており、ブランド名は「品質第一」を表しています。
日本の豆腐にロゴが入っているのを見た子どもたちが、香港産の豆腐にもロゴを入れないのかと不思議がったそうです。 Jeffさんは、豆腐にロゴを入れるかどうかは、それがお客に価値をもたらすかどうか次第だと考えています。豆腐にロゴを「焼き付ける」には、その方法、食品の品質、食品の安全性を考えなければなりません。日本では各豆腐工場が代々受け継がれた独自の技を持っているからこそ、豆腐に入った屋号やロゴに象徴的な意味があるのです。ご存じないかもしれませんが、新佛香が街市に届ける板豆腐の表面には、実は新佛香のロゴが押されています。次の機会にぜひ注目してみてください。
「時代は変わる。消費者の好みも変わる」
豆品業は長年の発展のなかで市場に適応し続け、少しずつ変化してきました。Jeffさんによると、最初に発売したパック入り豆腐は市場の反応が芳しくなく、「パック入り豆腐は豆腐じゃない、街市で買うのこそ豆腐だ(盒裝豆腐不是豆腐,街市買嘅先至係豆腐)」という批判も受けました。のちに無糖豆乳を発売したときにも、「どうして砂糖まで惜しむのか、砂糖なしの豆乳なんて飲みにくい(點解無糖咁慳儉,豆漿無糖咁難飲?)」と言うお客がいたそうです。
パッケージの変化は、お客に多くの利点をもたらしました。たとえば豆乳の製法が変わり、製造過程でパスチャライズ式の高温殺菌法を用い、豆乳を急速冷却することで、鮮度を保てる期間を延ばせるようになりました。また、かつての豆腐工場には冷蔵室がなく、温かい豆腐がそのまま街市へ直送されていたため、街市では最も新鮮な豆腐を買うことができました。2000年頃から包装済み豆品への需要が高まり、チェーン飲食店からより高い鮮度保持の要求が出されたため、豆腐工場も冷蔵室を設置し、冷蔵車を導入して、輸送中の鮮度をより長く保てるようにしました。その後パック入り豆腐が登場し、豆腐を買うのも食べるのもいっそう手軽になりました。香港で最初にパック入り豆腐を製造した会社は百福豆腐で、壹品は2番目でした。
現在、壹品は香港最大の伝統的豆品工場で、従業員はほぼ100人、職人も数十人います。生産する製品の種類は多く、街市、飲食店、チェーンストアなどに供給しています。
近年はお客が製品の品質をとても重視するようになり、メーカーは製品の質を高め続ける必要に迫られています。
伝統的な豆腐づくりでは、まず大豆を水に浸し、挽いて呉(ご)にし、挽いたあとにおからを分離してから煮ます。現在は直火ではなく、ステンレス釜で蒸気により加熱するため、人手を節約できます。200リットルの大きなタンクひとつ分を煮上げたら凝固させ、固まったものを木箱の型に一つひとつ入れて押し固め、豆腐にします。上質な豆腐をつくるには、最も新鮮な一級品の非遺伝子組み換え大豆を使わなければなりません。壹品は、香港で初めて有機豆腐を生産した工場です。
豆乳の容器も時代とともに移り変わってきました。香港の人々は昔、コップで豆乳を飲むのが習慣でしたが、1980〜90年代にはコーラ用のプラスチックボトルに豆乳を詰める方法が生まれました。その後、衛生と品質保持への配慮から、製造工程は密閉されたパイプラインを通し、容器には高温殺菌ボトルが使われるようになりました。さらに食品パッケージは「7+1」のラベル表示規定(香港の栄養表示制度)を満たし、商品説明条例の規定を守らなければなりません。各製品にはバーコードが印刷され、そこに製造の詳細な情報が記録されています。いわば出生証明書(香港でいう「出世紙」)のようなもので、メーカーが効率よく追跡できる仕組みです。
時代は変わっても、香港の人々の豆品への愛は変わりません。小さな豆品工場も、大きな豆品工場も、香港の豆品業は今も香港の人々に寄り添い、毎日新鮮でおいしい大豆食品をつくり続けています。
さまざまな豆品の製造工程を大公開: 1.豆乳を煮る工程




大豆を浸す > 大豆を挽く >豆乳を煮る
2.布包み豆腐


布で包んだ豆腐 > 成形後に布を外した豆腐
3.パック入り豆腐


全自動の豆腐充填 > パック入り豆腐
4.板豆腐づくり




板豆腐づくり > まず白い布を敷いて豆腐の呉を注ぐ > 布で包み木の板を載せて水分を押し出す > 成形されるまで
5.豆乳づくり





全自動の豆乳製造 >豆乳をボトルに充填 > 冷却 >包装
資料出典:豆品製造の写真は壹品豆品より提供
有線電視(香港のケーブルテレビ局) https://www.youtube.com/watch?v=r16Qj_WEnHA
最終更新日:2022年11月 本ページの「さらに読む」のリンクは、香港品牌博物館の親子絵本『豆品的故事』(豆品のものがたり)の内容を補足するものです。本書の制作にあたっては内容の正確性と完全性に努めていますが、記載漏れや更新すべき情報がございましたら、どうぞご遠慮なく著者までお知らせください。